「カットレッスンは練習だから、残業代は出さなくていいよね?」

美容室を経営しているオーナーから、こういった声をよく聞きます。スタッフのために練習場所と道具を提供している。技術を磨くための時間だから、業務とは別の話——そう思っているオーナーは少なくありません。

でも実は、この考え方がトラブルの原因になることがあります。


カットレッスンは「労働時間」になるのか

結論から言うと、カットレッスンが「業務命令」として行われている場合、労働時間として扱う必要があります。

労働時間かどうかを判断するポイントは、「使用者の指揮命令下に置かれているかどうか」です。

たとえばこういったケースは、労働時間になる可能性が高いです。

「明日のレッスンに参加するように」と指示している、参加しないと評価に影響する雰囲気がある、レッスンへの参加が事実上強制されている——こういった状況であれば、たとえ「練習」という名目であっても、労働時間として残業代を支払う必要があります。

一方で、完全に自由参加で、参加しなくても何の不利益もない場合は、労働時間に該当しないケースもあります。

「参加は自由」と言いながら、実態は強制に近い——これが一番グレーで、トラブルになりやすいパターンです。


「閉店後のレッスン」で起きやすいトラブル

カットレッスンや勉強会の手当については、スタッフの労働環境や強制的に参加を促しているかどうかがポイントになります。退職したスタッフから「閉店後のカットレッスン分の残業代を払ってほしい」と請求されるケースが実際に起きています。

在職中は何も言わなかったのに、辞めた後に請求してくる。そういった事態を防ぐためにも、カットレッスンの扱いを事前に明確にしておくことが大切です。


「朝の掃除・準備時間」も要注意

カットレッスンと同様に問題になりやすいのが、開店前の掃除や準備時間です。

「8時に来て掃除してから開店準備をするのが当たり前」という文化のサロンは少なくありません。でも、オーナーの指示のもとで行う掃除・準備は、労働時間に該当します。

開店が10時なのに、8時から来て作業をしている。その2時間分は、本来賃金を支払う必要があります。「みんなそうしているから」「昔からこうだから」では、労働基準法上は通用しません。


ビラ配りや研修の移動時間は?

その他にも、労働時間として扱う必要があるか迷いやすいケースがあります。

集客のためのビラ配り
オーナーの指示で行うビラ配りは、業務の一環です。時間帯・場所を指定して行わせる場合は、労働時間として賃金を支払う必要があります。

外部研修への参加
オーナーが参加を指示した外部研修は、労働時間になります。研修中の交通費・参加費の負担についても、事前に明確にしておくと安心です。

研修場所への移動時間
研修への移動時間が労働時間に該当するかどうかは、ケースによって判断が分かれます。移動中に業務の指示も業務を行うこともなく、移動手段の指示も受けず、自由な利用が保障されているような場合には、労働時間に該当しません。


トラブルを防ぐために今できること

カットレッスンや開店前の準備時間をめぐるトラブルを防ぐためには、ルールを明文化することが一番の近道です。

就業規則や雇用契約書に、以下の点を明記しておきましょう。

始業・終業時刻を明確にする(「何時から何時までが労働時間か」を書面で示す)、カットレッスンの位置づけを明確にする(業務命令か自由参加かを明示する)、参加した場合の賃金の扱いを決めておく。

「言った・言わない」のトラブルは、書面があるだけで大きく防げます。


「うちは今までトラブルになったことがない」という方へ

トラブルになっていないのは、スタッフが声を上げていないだけかもしれません。在職中は我慢していても、退職後に請求してくるケースは珍しくないです。

今の労働時間の管理が適切かどうか、一度確認してみることをおすすめします。「うちの場合はどうなんだろう」と気になった方は、お気軽にご相談ください。