「協会けんぽって何ですか?」「薬剤師国保と何が違うんですか?」—薬局を開設するとき、またはスタッフを採用するときに、こういった疑問を持つ経営者は少なくありません。
薬局は他の業種と比べて、加入できる健康保険の選択肢が多い業種です。それぞれ保険料や給付内容が異なるため、どれを選ぶかによってスタッフの手取りや経営者の負担が変わってきます。今日は、薬局に関係する健康保険の種類と選び方のポイントをお伝えします。
薬局に関係する健康保険の種類
薬局で働くスタッフ(薬剤師・パート)が加入できる健康保険は、主に以下の3つです。
①協会けんぽ(全国健康保険協会)
中小企業の多くが加入している、最も一般的な健康保険です。保険料は給与・賞与の額に応じて決まり、事業主と従業員が折半して負担します。都道府県ごとに保険料率が異なります。
個人経営の薬局の場合は、一定数以上のスタッフの同意を得る必要があります。
②薬剤師国保(国民健康保険組合)
各都道府県の薬剤師会会員が開設する薬局等で働く方が加入できる、薬局業界特有の健康保険です。保険料は収入に関係なく定額で、事業主折半はありません。
薬剤師国保の大きな特徴
薬剤師国保は、一般的な健康保険と異なる点がいくつかあります。
保険料が定額
薬剤師国保の保険料は、収入額に関わらず区分ごとに一律額が設定されています。そのため、給与が高い薬剤師ほど協会けんぽより保険料が安くなりやすい傾向があります。
一方で事務員だと保険料が割高に感じることもあります。
賞与から保険料が引かれない
協会けんぽでは賞与からも特別保険料が徴収されますが、薬剤師国保では賞与時の徴収がありません。賞与が多い場合は、大きなメリットになります。
扶養の概念がない
協会けんぽの場合、被保険者の扶養家族には保険料がかかりませんが、薬剤師国保は国民健康保険法に基づいているため、扶養者という概念がなく、家族も被保険者として保険料がかかります。家族が多い場合は注意が必要です。
出産手当金・傷病手当金がない
協会けんぽには産休中に給与の約3分の2が支給される「出産手当金」や私傷病での休業時に給与の約3分の2が支給される「傷病手当金」がありますが、多くの薬剤師国保にはこの給付がありません。妊娠・出産を考えているスタッフにとっては、重要な違いです。特に薬局は働く女性の割合が比較的多いです。この違いで別の薬局を検討する方も少なくありません。薬剤師国保しか知らないという経営者の方は、この違いは必ず認識しておきましょう。
薬剤師国保に加入できる条件
薬剤師国保に加入できるのは、一定の条件を満たす事業所に限られます。
薬剤師国保は、各都道府県の薬剤師会会員が開設する5人以下の薬局等で勤務する方が加入できる保険です。法人事業所または従業員を常時5人以上雇用する事業所は、社会保険への加入が原則となります。
ただし、すでに薬剤師国保に加入している個人事業所が法人になった場合や従業員が5人以上になった場合でも、「健康保険適用除外承認」を受けることで、従来どおり薬剤師国保の被保険者として継続することができます。
つまり、最初から薬剤師国保に加入していれば継続できますが、途中から切り替えることは基本的にできません。開業時の選択が重要になります。
どちらが得かは状況による
協会けんぽと薬剤師国保のどちらがお得かは、その方の年収や立場などによって異なります。年収750万円以上で扶養家族がおらず、出産の可能性がない場合は薬剤師国保の方がお得だと言われています。一方、将来妊娠・出産をお考えの方にとっては協会けんぽの方がお得かもしれません。
簡単に整理すると、こうなります。
薬剤師国保が有利なケース
- 給与・賞与が高い薬剤師
- 扶養家族がいない
- 妊娠・出産の予定がない
協会けんぽが有利なケース
- 給与が比較的低い
- 扶養家族がいる
- 産休・育休を取得する可能性がある
- 傷病手当金(病気やケガで働けなくなったときの給付)が必要
薬局経営者として知っておくべきこと
健康保険の選択は、スタッフの採用・定着にも影響します。
「出産手当金や傷病手当金がない」ことを知らずに薬剤師国保に加入していたスタッフが、産休を取るタイミングで初めて給付がないことに気づく—こういったケースが実際にあります。採用時に健康保険の違いを説明しておくことが、後々のトラブル防止につながります。
また、薬剤師国保に加入している薬局が従業員数5人以上になった場合や法人化する場合は、適用除外承認の手続きが必要になります。忘れてしまうと社会保険への強制加入となり、手続きが複雑になることがあります。
「うちの薬局はどちらが合っているのか確認したい」「手続きの進め方がわからない」という段階からでも、お気軽にご相談ください。
